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「山崎豊子と妥協」

山崎豊子が死んだ。

長編小説で彼女の本ほど夢中になった物はない。
「不毛地帯」、「沈まぬ太陽」、「二つの祖国」
続きが気になって夜も寝ずに読んだ。

特に「沈まぬ太陽」は余りにも続きが気になり、深夜に本屋を廻ったことがある。
勿論、開店している店などなく、まとめ買いしなかった自分に腹が立った。
それぐらい彼女の本は面白い。

元ジャーナリストの彼女は大凡、妥協と言う言葉と無縁の人でもある。
膨大な資料を漁り、女一人でアフリカの大地を駆け回り、その中から一割のみを
小説の軸として採用する。言葉を置き換えれば本物の”マニア”である。

だから歴史を感じられる。時代背景を容易に現実と結ぶことができる。
登場人物の苦悩に共感し、自然と彼らを応援する。
読み飽きたはずの「二つの祖国」を度々読み返す。

映像化されている作品も多い。

「白い巨塔」は誰もが知る作品で、低視聴率に喘いだ「不毛地帯」も
非常に見所があった。映画の「沈まぬ太陽」はキャストの割に雑で退屈だったが
幾人もの役者が彼女の作品を経て出世している。

山崎豊子は役者に拘る作家でもあった。

仲代達也、田宮二郎、上川隆也、そして最後が唐沢寿明。
「役者としてのプライドを持て」とはっぱをかける人だった。
上川隆也は出演作を選べと再三注意されているが、本人はどう受け止めているのだろう。

「運命の人」が彼女の遺作になると言われていたが、最近では「約束の海」
を連載している。死期を悟りながらの執筆で、文章は全盛に比べると
衰えを感じさせる物ではあるが、やはり生き方に妥協がなかった。

”書きながら棺に入る”を体現して見せた。
見事な死に様だと心から思う。
by anshare-project | 2013-10-01 22:42 | 日記
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